2024年4月の記事一覧
全通研からの声明文
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通信制高等学校の適正化を求める声明
― 通信制高等学校における教育の充実・発展のために ―
はじめに
私たち全国高等学校通信制教育研究会は、昭和二五年、「全国通信教育研究協議会連合会」として発足し、その草創の時代から通信制高等学校における教育内容及びその指導方法の改善・改革に組織一丸となって取り組んできた教育研究団体であります。また、通信制高等学校における教育的責務を果たすために、誇りを持って、広範にわたる事業を推進してまいりました。
昨今の一部の通信制高等学校におけるいくつかの事象については、全国の通信制高等学校の充実・発展を願う立場から看過しえないことであり、ここに、「通信制高等学校の適正化を求める声明」を発し、関係者にその是正に向けた早期の取り組みを強く求めるものであります。
通信制高等学校における適正な指導について
高等学校における教育は、教育職員免許状を所持する教員が、学習指導要領に基づき、生徒の特性を把握して、教科・科目の教育目標達成に向けて教育活動を展開することが大原則といえます。通信制高等学校においても例外ではありません。
当然ながら、多様な通信の手段を用いて高校教育を展開する通信制高等学校においては、学習指導要領をはじめとする法令に基づき、具体的な学習の展開において、「報告課題」(「レポート」以下同)、「面接指導」(「スクーリング」以下同)、「試験」が定められています。これらを総合的に組み立て計画的に行ってこそ、学校教育としての通信制高等学校なのです。
(一) 学校教育に携わる教員は、原則として教育職員免許状所持者でなければなりません。
免許を所持しない者が教科指導を行ったり、あるいは特定教科の免許を有することで、他の教科も指導できるわけではありません。
また、免許がなければ、「面接指導」をすることはできませんし、「報告課題」の作成・添削、試験問題の作成・採点、そして評価もできません。
(二)「報告課題」、「添削指導」は、通信制教育の命です。
「報告課題」は、丁寧な添削を基に、自学自習を支援することが基本です。「報告課題」が添削されなかったり、○×のみで返却されることはありません。択一式や、記号のみであったり、マークシート方式の「報告課題」など添削が伴わない「報告課題」はありません。
(三)「報告課題」については、法令等に従った提出回数が必要です。
「報告課題」は、教科書に沿って、一年間で学習すべき範囲を計画的かつ継続的に学ばせ完結します。
(四)「面接指導」の回数は科目ごとに定められています。
学習指導要領は、「面接指導」の回数等についての基準を定めています。例えば、「国語表現」という科目については、標準単位数が三単位ですので三時間の「面接指導」が必要とされ、課される「報告課題」の回数は九回です。これが最低基準です。
よって、「放送学習減免」、「ネット学習減免」を加味しても、一年間に学ぶ全科目二五単位前後の「面接指導」が、二日間で終わることはありません。
(五)「面接指導」は、一単位時間を標準五〇分と定めています。
一単位時間を二〇分や三〇分で済ませることはできません。また、指導の方法は生徒一人ひとりの課題解決に向けた指導を行います。報告課題の解答のやり取りだけで「面接指導」が終始することはありません。
「面接指導」については、一人ひとりの出席状況を管理し、必要回数を満たすよう、きめ細かな指導を行う必要があります。
(六)保健体育の「面接指導」と、学校行事等の「特別活動」は異なります。
いわゆる学校行事だけであったり、またはビルの周りを散策することだけで、保健体育の「面接指導」が完結することはありません。
(七)単位認定のための「試験」は、学校で、教員の監督の下に実施されます。
原則として、教員の監督下にない自宅で「試験」が行われることはありません。また、スマートフォン等で解答することも認められません。まして、問題とともに、解答が配られることはありません。「試験」は、厳正に採点し、生徒本人に戻す必要があります。
(八)通信制高等学校の修業年限は、三年以上です。
前籍校の期間も含め、三年に不足する在籍で卒業が認められることはありません。
(九)学校としての施設・設備は、高校生活を充実させるために、きわめて大切です。
自治体により基準が異なりますが、法令に即した施設の中で、学習活動を始めとする高校生活が送れるよう十分に整備すべきです。
(十)高等学校と、その学習をサポートするサポート施設とは役割が異なります。
学習を進めるために、高等学校における学習以外に、サポート施設を利用することもあります。しかし、サポート施設は、学校教育法にいうところの学校ではありません。サポート施設で「面接指導」は行えません。そこにおける学習で、単位が認定されることもありませんし、高等学校卒業の資格を取得することもありません。
通信制高等学校の充実・発展のために
通信制高等学校は、生徒の成長の手応えを十分に感じながら、それを励みとして教育活動を展開できるすばらしい教育の場であります。まさに「教員冥利」につきるものといえます。
しかしながら、そのために、学校教育法や学習指導要領等の定めを無視した指導が肯定されることにはなりません。昨今の一部の通信制高等学校における看過しえない事象に触れるにつけ、憤りを感じるとともに、そこに学ぶ生徒のためにも早期に是正すべきと願わざるをえません。そして、それらの課題解決のためには、通信制高等学校関係者及び関係機関が力を合わせて取り組むべきと考えます。
そのためにも、平成二六年六月に出された中央教育審議会初等中等教育分科会高等学校教育部会「審議まとめ」における「広域通信制高校に関わるガイドライン」の制定と、それに基づく「第三者機関による広域通信制高校の適正な評価」に関する施策を積極的に支持・支援したいと考えます。これらの施策を通じて、健全な通信制高等学校の教育が展開され、さらなる充実・発展ができるという確信から、その早期の実現を願うものであります。
また、学校法人、学校設置会社を問わず、それらの認可権者である各自治体等の担当者の皆さんにお願いいたします。認可した学校が、どのような教育を行っているのか。さらに、そこで学ぶ生徒がどのような指導を受けているのか。これらを正確に把握され、問題があるとすれば、速やかにその是正に取り組んでいただきたいと心から願うものであります。
終わりに
一部の通信制高等学校における不適正な事象が改められ、真摯に生徒の教育に取り組む圧倒的多数の通信制高等学校による教育的な取り組みや、そこで懸命に学ぶ多くの生徒の努力が報われるよう、私たち全国高等学校通信制教育研究会は、一層の教育研究、そして教育実践に励み、通信制高等学校の充実・発展に尽くしていく所存であります。
平成二八年一月二五日
全国高等学校通信制教育研究会